先日、映画ブラックアダムを観てきました。
以下、ネタバレありの感想になります。
この映画のレビューや感想を見ているとブラックアダムに感情移入しにくいというものが散見されます。
ドウェイン・ジョンソンが演じるブラックアダムの正体は、5000年前にカーンダックという国を圧政から解放したテス・アダムという人物です。
5000年前にテス・アダムはその存在を危険視されて封印されます。
冒頭でこの辺の事情が説明されるのですが、非常に情報量が多く、もう少し見せ方があったのではないかという気もします。
現代に復活したブラックアダムですが、彼には明確な目的がないため、感情移入しにくいという評価は確かにその通りです。
ですが、これはむしろ当然でしょう。
5000年間封印されていたため、故郷のカーンダックはすっかり姿を変えています。
まったく新しい環境に1人で投げ出されたブラックアダムは、例え神のような力を持っていても非常に孤独な存在です。
何をしたらいいのか本人も分からない状態なのだと思います。
そんなブラックアダムを制圧するためにアメリカ政府から派遣されるのが、DCのスーパーヒーローチームであるJSA(ジャスティス・ソサエティ・オブ・アメリカ)です。
このJSAのメンバーもかなり個性的で、彼らの特殊能力も上手に映像化されています。
中でもピアース・ブロスナンが演じるドクター・フェイトの存在感が素晴らしいです。
未来が見える能力を持っているため、どこか冷めて疲れきったような雰囲気のキャラクターなのですが、終盤では非常に熱い展開を見せてくれます。
現代のカーンダックはインターギャングという組織による圧政が行われています。
ただ、悪役としてのインターギャングの描写はあまり詳細なものではなく、本作のポイントはブラックアダムとJSAの関係性にあるといえます。
インターギャングにまったく容赦しないブラックアダムと人命を尊重するJSAは激しく対立しますが、最終的にはカーンダックを救うために共闘します。
ブラックアダムとJSAがそれぞれの価値観との違いに折り合いをつけていく過程が丁寧に描かれていて好感が持てました。
またカーンダックの住人が、インターギャングには目をつぶり、ブラックアダムが現れたとたんに介入したJSA(とアメリカ)に拒絶反応を示すシーンも印象に残ります。
「正義」の内容が勝手に決められがちな現代社会を皮肉っているようにも見えて興味深かったです。
暴力的なブラックアダムも子どもには優しいのですが、終盤で5000年前に息子を殺されていたことが分かります。
彼のキャラクターを知るうえで重要な情報なので、このことは冒頭に説明した方が感情移入もしやすかったような気もします。
ですが、意外性を味わえたのも確かなので難しいところですね。
ラストシーンはブラックアダムとヘンリー・カヴィルが演じるスーパーマンとのにらみ合いで終わります。
公開後、ヘンリー・カヴィルがスーパーマン役を降板させられており、2人の激突は現状ではなさそうです。
ぼくはヘンリー・カヴィルのスーパーマンも大好きなので、なんとか実現してほしいですね。
今作はエンターテインメントとしてよく出来ているだけでなく、善と悪のあいまいさといったメッセージ性も意外に強く、アメコミの面白さをかなり高いレベルで映像化した作品だと思います。
※ 当記事のブラックアダムとドクター・フェイトのフィギュアの画像は、声優の田中啓介さんからご提供いただきました。