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スーパーやコンビニなどでレジに並んでいると、店員さんの手首にサポーターが付いているのを見かけることがあります。
「レジの仕事は手をよく使うから、手首を痛めやすいのかな?」
あなたも、そんな疑問を持ったことはないでしょうか。
もちろん、レジ係だから必ず腱鞘炎になるわけではありません。
また、手首にサポーターをしているからといって、必ずしも腱鞘炎とは限りません。
しかし、レジ業務には、手や指、手首を同じような動作で繰り返し使う場面が多くあります。
今回のブログでは、そもそも腱鞘炎とはどのようなものなのか、代表的な腱鞘炎である「ドケルバン病」や「ばね指」について解説しながら、レジ業務と手首の負担について考えてみたいと思います。
腱鞘炎とは?
まず、腱鞘炎を理解するためには、「腱」と「腱鞘」がどのようなものなのかを知る必要があります。
筋肉は、それ自体が骨を直接動かしているわけではありません。
筋肉の両端には「腱」という丈夫な組織があり、この腱が骨につながっています。
筋肉が縮むと、その力が腱を通して骨に伝わり、関節が動きます。
例えば指を曲げる場合、前腕にある筋肉が収縮し、その力が腱を通って指まで伝わることで、指が曲がります。
ところが、手首や指の周辺では、腱が骨や関節の近くを通過しながら何度も動く必要があります。
そこで登場するのが「腱鞘」です。
腱鞘は、腱の通り道を作り、腱がその中をスムーズに滑るようにする役割を持っています。
イメージするなら、
腱=ワイヤー
腱鞘=ワイヤーが通るトンネル
と考えると分かりやすいでしょう。
通常は、腱が腱鞘の中を滑らかに動くことで、私たちは指や手首を自由に動かすことができます。
しかし、同じ動作を何度も繰り返したり、強い負荷がかかったりすると、腱や腱鞘に負担がかかり、腱の滑りが悪くなることがあります。
その結果、動かしたときの痛みや腫れ、引っかかりなどが起こる状態が、一般に「腱鞘炎」と呼ばれています。
ただし、「腱鞘炎」という名前から「炎症だけが原因」と考えてしまうのは少し注意が必要です。
実際には、繰り返しの負荷によって腱や腱鞘の組織に変化が起こり、腱がスムーズに動きにくくなることもあります。
つまり、腱鞘炎は単純な炎症というよりも、腱と腱鞘の滑らかな動きが損なわれることで、痛みや動かしにくさが生じる状態と考えると理解しやすいでしょう。
腱鞘炎の代表例① ドケルバン病
手首の腱鞘炎の代表的なものが、ドケルバン病です。
ドケルバン病は、手首の親指側にある腱と腱鞘に問題が起こるものです。
親指を動かす腱には、手首の親指側を通るものがあります。
この部分に負担がかかると、親指を動かしたときや、手首を動かしたときに、親指側の手首に痛みが出ることがあります。
例えば、
- ペットボトルのふたを開ける
- スマートフォンを操作する
- 荷物を持つ
- 赤ちゃんを抱く
- 手首をひねる
といった動作で痛みを感じることがあります。
特に重要なのが、親指を使いながら手首も動かす動作です。
このような動作を繰り返す仕事では、手首の親指側に負担が蓄積する可能性があります。
レジ業務でも、商品をつかむ、持ち上げる、バーコードを読み取る、お金を扱うなど、親指と手首を同時に使う場面が少なくありません。
そのため、レジ業務を行う人の手首の痛みを考える場合、ドケルバン病も一つの可能性として考えられます。
腱鞘炎の代表例② ばね指
もう一つの代表的な腱鞘炎が、ばね指です。
ばね指は、指を曲げ伸ばしするときに、
「カクッ」
「引っかかる」
「パチン」
といった感覚が出ることがあります。
ひどくなると、曲げた指が伸ばしにくくなり、反対の手で指を伸ばすような状態になることもあります。
これは、指を曲げる腱が通る腱鞘の部分で、腱の滑走が悪くなることが関係しています。
指を動かすたびに腱が腱鞘の中を行き来するため、繰り返しの動作によって負担が蓄積する場合があります。
レジ業務では、商品の取り扱いやボタン操作など、指を繰り返し使う場面が多いため、手指のトラブルを起こす要因の一つになる可能性があります。
ただし、ばね指は仕事だけが原因ではありません。
年齢、ホルモンの変化、糖尿病など、さまざまな要因が関係することがあります。
レジ業務と腱鞘炎の関係
では、なぜレジ係に手首のサポーターをしている人が多いように感じるのでしょうか。
ここで重要になるのが、反復動作という考え方です。
レジ業務では、一つ一つの動作だけを見ると、それほど大きな負荷がかかっていないように見えるかもしれません。
しかし、同じような動作を長時間にわたって何度も繰り返すことになります。
例えば、
商品を持つ
↓
手首を動かす
↓
バーコードを読み取る
↓
商品を置く
↓
次の商品を持つ
という動作を何度も何度も繰り返します。
一回の動作による負担が小さくても、それが何百回、何千回と積み重なると、手首や指の腱には継続的な負荷がかかることになります。
これが、反復動作による負担です。
「軽い負荷」でも繰り返すと問題になる
身体の負担を考えるとき、「どれくらい重いものを持ったか」だけでは十分ではありません。
例えば、10kgの荷物を一回持つことと、500gの商品を何百回も持ち続けることでは、身体への負担のかかり方が違います。
レジ業務では、後者のような「比較的軽い負荷を何度も繰り返す」という特徴があります。
特に、
- 手首を同じ方向に繰り返し動かす
- 指を何度も曲げ伸ばしする
- 親指を頻繁に使う
- 商品を持ったまま手首をひねる
- 手首を反らした状態で作業する
といった動作が重なると、手や手首への負担が大きくなる可能性があります。
さらに、休憩時間が少なかったり、忙しい時間帯に動作が速くなったりすると、身体が回復する時間も不足しやすくなります。
レジの種類によっても負担は変わる
現在では、昔ながらのレジだけでなく、セルフレジやセミセルフレジなど、さまざまなタイプのレジがあります。
そのため、すべてのレジ係が同じ動作をしているわけではありません。
商品のスキャン方法や商品の置き方、レジの高さ、作業スペースなどによっても、身体への負担は大きく変化します。
また、レジだけでなく、商品の品出しや袋詰め、清掃などを兼任している場合には、手首にかかる負担はさらに変わってきます。
つまり、レジ係だから腱鞘炎になるという単純な関係ではありません。
どのような作業を、どのくらいの頻度で、どのような姿勢で行っているのかを見ることが大切です。
腱鞘炎を予防するために
腱鞘炎を防ぐためには、「痛くなってから対処する」のではなく、普段から手や手首にかかる負担を減らしておくことが重要です。
① 同じ動作を続けない
可能であれば、作業内容を定期的に変えることが有効です。
同じ筋肉や腱ばかりを使い続けるのではなく、異なる作業を組み合わせることで、一部に集中する負担を減らせます。
仕事上難しい場合でも、短時間でも手を休ませることを意識しましょう。
② 手首だけでなく腕全体を使う
細かい作業をするとき、手首だけを何度も動かしていないでしょうか。
手首だけで作業するよりも、肘や肩を含めて腕全体を使うことで、一部分への負担を分散できる場合があります。
例えば商品を移動させるときも、手首だけをひねるのではなく、肘や肩も一緒に動かすことを意識してみましょう。
特に「腕は肩甲骨から始まっている」という意識を持つことは大切です。
③ 手や前腕を軽く動かす
仕事の合間に、手を開いたり閉じたり、手首をゆっくり動かしたりするのも一つの方法です。
前腕の筋肉を軽く伸ばすストレッチも、手首周辺の緊張をリセットするきっかけになります。
ただし、すでに痛みがある場合は、無理に伸ばしたり強く動かしたりしないようにしましょう。
④ 作業環境を見直す
レジの高さや商品の置き場所など、作業環境も手首への負担に影響します。
必要以上に手首を曲げたり、腕を伸ばし続けたりする姿勢になっていないか確認してみましょう。
ほんの少し作業位置を変えるだけでも、身体の使い方が変わることがあります。
⑤ サポーターを適切に利用する
手首のサポーターを使用することも、場合によっては選択肢になります。
サポーターによって手首の動きを制限し、負担がかかりすぎないよう補助することができます。
ただし、サポーターをしていれば何をしても大丈夫というわけではありません。
痛みを我慢して作業を続けるためにサポーターを使うのではなく、負担を減らすための補助として利用することが大切です。
腱鞘炎は「使い過ぎ」だけを考えない
腱鞘炎というと、「手を使い過ぎたから起こる」と考えがちです。
確かに、繰り返し動作は重要な要因の一つです。
しかし、実際には年齢、ホルモンの変化、基礎疾患、作業姿勢、身体の使い方など、複数の要因が関係する場合があります。
また、同じレジ業務をしていても、手首を痛める人と痛めない人がいます。
この違いには、作業量だけではなく、手首の動かし方や肩・肘・前腕など周囲の関節の動きも関係している可能性があります。
そのため、手首に痛みが出たときには、「手首だけが悪い」と決めつけず、身体全体の使い方を見直してみることも大切です。
まとめ
レジ業務では、商品をつかむ、持ち上げる、バーコードを読み取る、ボタンを押すなど、手や指、手首を繰り返し使います。
一回一回の動作はそれほど大きな負荷ではなくても、長時間にわたって何度も繰り返すことで、腱や腱鞘に負担が蓄積する可能性があります。
腱鞘炎の代表例には、手首の親指側に痛みが出るドケルバン病や、指の曲げ伸ばしで引っかかりが生じるばね指があります。
ただし、レジ係だから腱鞘炎になりやすいと単純に決めつけることはできません。
重要なのは、どのような動作を、どのくらい繰り返しているのかという視点です。
手や手首への負担を減らすためには、同じ作業を続けすぎないこと、手首だけでなく腕全体を使うこと、適度に休憩やストレッチを取り入れること、作業環境を見直すことなどが役立ちます。
そして、手首の痛みが続く場合には、無理をして仕事を続けるのではなく、原因を確認することも大切です。
私たちの身体は、強い負荷だけでなく、小さな負荷の繰り返しによっても影響を受けます。
「これくらいなら大丈夫」と思うような小さな負担こそ、毎日の生活の中で積み重なっているかもしれません。
手首や指をよく使う仕事をしている方は、一度、自分の身体の使い方を振り返ってみてはいかがでしょうか。