前々回のブログでは前腕の尺骨と橈骨の関係について考えてみました。
今回は下腿(すね)の骨格について考えてみたいと思います。
脚は、大腿部(太もも)は大腿骨1本で、下腿は脛骨と腓骨の2本で構成されています。
上の骨が1本で下の骨が2本というのは、上腕(上腕骨)と前腕(尺骨と橈骨)の関係と同じです。
ただ、大きく違っている部分もあります。
尺骨と橈骨は上腕骨と肘関節をつくります。
ですが、大腿骨と膝関節をつくるのは脛骨だけであり、腓骨は関係していません。
そもそも腓骨は脛骨と比べてかなり細く、脛骨に対して添え木のように外側に付いています。
実は哺乳類の腓骨は退化していて、役割の重要性としてはあまり大きくありません。
足首の関節は脛骨と腓骨で構成されているので必要な骨ではありますが、膝関節もつくる脛骨と比べると重要度は低いといえます。
では、なぜ脛骨が太く、腓骨は細いのでしょうか。
両生類や爬虫類の骨格を見てみると、脛骨と腓骨の太さはほぼ1対1で対等の関係になっています。
腓骨の退化は哺乳類から始まっている傾向です。
哺乳類の胴体は、地面を這うような姿勢の両生類や爬虫類よりもかなり高い位置にあります。
胴体が地面から高くなれば、膝関節はより頑丈である必要が出てきます。
脛骨と腓骨が同じ割合で重量を支えていると、つなぎ目の部分に大きな負荷がかかり2本の骨がずれる原因になります。
そのため、より負荷がかかる内側にある脛骨が太くなり、外側の腓骨の役割が低下したのだと思います。
人間の場合は完全な2足歩行なので、腓骨の退化の傾向はかなり強いです。
動物が進化するためには、あまり使わない機能を退化させることはよくあります。
その意味で進化と退化は表裏一体の関係といえますが、哺乳類の脛骨と腓骨もその1例といえます。